ヘ 天麩羅
調味料だけでは蕎麦が淋しい。揚げたてのさくさくした「天麩羅」が載っているとなお幸せにな る。この語源は、①山東京伝が名づけ親、②キリスト教では年四回肉食を休む四筍節があり、魚を クアトロ、テンプランと呼ばれたからくるとされるがはっきりとは解らない。江戸前の魚を串刺し にし、胡痲油で揚げタレをつけてカブリつく。一本四文、一文二五円として今の金で約百円、その 頃も今も物価はそう変わっていない。江戸前の生きのいい鱚や穴子を竹串に刺して素揚げして食べ る。現在では小麦粉に玉子を入れ氷水で大まかにかき混ぜる。横着して混ぜない訳ではない。余り きれいに混ぜると衣に華が咲かないからである。この辺の極意を表した粋な言葉がある。「昔の芸 者の髪の毛と同じで、結うに結われず、解くに解かれず」と。
油は菜種油の様な植物油では向かない、高温の胡痲油で揚げる事によって中身はレア、具材の芯 まで熱がとおりあの胡痲の香りが魚に移り、絶妙の味となって江戸っ子の舌を嘆能させた。このス タイルは昭和の初期まで上野や神田のガード下辺りの屋台の店でやっていた。因みに野菜の油揚は 江戸でも天麩羅といわず「あげもの」といった。
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