The 江戸物語 88

〈地之巻〉

はじめに

おおらかに、主に庶民の立場に立っての解釈にもとづき「江戸物語88」<天之巻>を語って来た。しかし、二百六十余年も続いた江戸を、項目別にまとめた小冊子で表されるものでは到底ない。そこで、それを少しでも補完すべく<地之巻>を書き出してみた。しかし掘れば掘る程、探れば探る程、その極みは逃げ去っていく。こうなればこちとらだって、自前の江戸っ子、腹を据えとことん付き合うつもりで二〇二〇年になった。

ところが早々から、世界を新型コロナなるものが蔓延、わが小品の作風も、世界の人々の苦しみを反映、それを感じおのずと何処となく、シビアな作風になってきたのは否めない。

しかしそこはそこそれはそれ、題材そのものの舞台は「江戸」である。江戸の時代でも、今回の世界的危難に負けない程の疫病、風水害、大飢饉、地震、大火事などなど、あげればいとまもない危難が、これでもかこれでもかと、江戸時代に生きた、弱い人々に襲いかかっていた。それでも持ち前の明るさ、ど根性、家族のそして周りの優しさ、思いやりによって生きていった。しかもそんな事は鼻にもかけず、たくましくにである。

 一方、欧州においても、おかれた環境は同じであった。上下水道設備が完璧でなかったその時代、鼠などに寄生するノミを媒体とする「黒死病(ペスト)」といわれた伝染病が、定期的に蔓延した。六世紀には東ローマ帝国(ピザンチン帝國)においては、推定約二千五百万人死亡。十四世紀になり、欧州で大流行した際は、推計約五千万人が死亡、当時の人口のおおよそ三分の一が犠牲になったと云われる。その都度、国家や宗教団体は、自己の体制と体面を保持する為、善良な国民の中からスケープゴートを選び、その人間に責任を転訛、その場を繕い逃げた。現代の厳しい情況下で、国や地方自治体が己の政策に自信が持てず、お互いになすりあっているのと同じである。

 外に出て声を上げて伝える事が、困難な状況下にあった二〇二〇年、温故知新、花のお江戸の昔に戻って、先人の政治、経済、社会、人々の生活、文化を掘り起こしてみるのも面白い。そこに現在との重ね図が見えてくる。その時、先人たちは何をしたのか、どんな失敗をして立ち上がったのか、そこから現代人が学ぶ事は沢山ある。

「江戸物語88」<地之巻>でも、“江戸から現代を斬る”と、今回も大げさなサブタイトルを付けさせて頂いた。今回の<地之巻>でも、その視点、観点を変えず、極力マクロのアングルで捉えていきたいと思う。

さて、益々、脳細胞の機能がさえわたり、目利きも鋭く厳しくなってきた、我が数少ないレアな愛読者皆様の、合点がいくであろうか。前作同様、ゆるり、まったりと、読んで頂ければ幸いである。          

あとがき

〈天之巻〉

はじめに

江戸、えど、江都、と云ってもこの言葉には、歴史、人間、生活等と云った色々な意味あいが含まれていて奥深い。江戸の人情も奥深い。

 今回このサイトでは、あらゆるアングル・視線から、江戸とはとハードなスタンスだけに留まらず、もっぱらやわらか目線で、庶民の時代「江戸」を捉えていきたい。

 尚、お断りであるがこのサイトは観光案内、まち歩きのガイドブックでもない、ひとつひとつの物語を集めた「江戸八百八町」に因んだ、末広がりの88の物語である。88ちょうどで 終わるか、足らないか、賢明な読者の皆様にはもうお解りかと思うが、江戸八百八町、浪花八百八橋はその数通りあった訳ではない。ただ数の多さを縁起のいい数字に置き換えただけの話である。1話1話楽しんで頂ければ幸いである。

 先ずは「江戸ッ子とは」とはに始まって「江戸の食生活」「江戸の男と女」等々江戸に関わる事柄を江戸っ子を御紹介しながら、エピソードを交え、川柳で風刺しながらまとめてみようと思う。さあ、飽きっぽい江戸っ子読者の皆様の期待にそえるか、どうか。


第1章 江戸っ子とは

第2章 江戸のなりたち

第3章 庶民の住まい

第4章 武士の住まい

第5章 火事と喧嘩は江戸の華

第6章 江戸湊と河岸

第7章 下り物と下らぬ物

第8章 下り酒と下らぬ醤油

第10章

第11章

第12章

第13章

第14章

第15章

第16章

第17章

第18章

第19章

第20章