ニ 握り鮨
「握り飯では 18 きっぷの車内昼めしと同じだ」との方々には着いたら産地の握り鮨は如何であろうか。地元で獲れた旬のネタをふんだんに使った鮨を食べるのも旅行の楽しみのひとつである。 「鮨」は魚が旨いと書く。この食べ物こそ本来の魚、素材が活かされる、逆に云うと魚の素材による処が大きい食べ物はない。
日本全国津々浦々、各地でそれぞれの鮨があり、時代によっても作り方、スタイルが変わってい る。琵琶湖沿岸の「鮒鮨」、紀伊、大和の「熟れ鮨」。京都北部若狭辺りの「鯖鮨」、大坂や西国の 「筥(はこ)鮨」、信越、飛騨、木曽など山間部へ行くと「笹鮨、朴葉鮨」等がある。
さて江戸はと云うと、華屋与兵衛とも堺屋松五郎ともいわれるが「早ずし」として始めたのが 「握り鮨」の始まりだとされる。鮒鮨で出来上がり迄三ヶ月、熟れ鮨でも食べられる迄二~三日か かった。それを気の短い江戸っ子のお客様にあわせる為、酢飯に新鮮な江戸前の肴をのせ、軽く 握って目の前に出す。しかも色々な具材が注文出来るとあって江戸っ子の人気を呼んだ。尤もその 頃は冷蔵庫なる保存設備はないから煮たり、焼いたり、醤油に漬けたり、酢で締めたりと色々と工 夫して食中毒に対処した。その頃のにぎり四天王はひかりもの、あなご、鮪づけ、玉子焼。文政年 間、一握八~一六文。
また「魚四分に飯(シャリ)六分」と云われる程、米の良しあしが鮨の味を決めた。「三度炊く 飯の強し柔らかし」と飯の炊き方にも神経を尖らせ、使用するシャリは一粒一粒が揃っていて幾分 酢の色が浸みこんでいるものが極上とされた。日本酒も鮨も米の要素、品質が味を決めた。
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