旅の原点 日本橋vs東京駅ⅲ ゼロキロスポット
10月14日は、明治5年新橋、横浜間に初めて鉄道が開通した日を記念して「鉄道の日」と定められた。この日に因んでJR東日本は、10月4日から19日まで旅客鉄道会社全線3日連続利用の乗り放題の切符を発売している。「青春18きっぷ」同様、JR各社全線と1部の第3セクターが乗車可能で、切符は¥7850である。1日当たり¥2617弱とリーズナブルな価格であるが、以前は18きっぷもそうだったが、期間中は都合の良い日に使用すれば良かったが、現在は乗り始めたら3日間乗り続けなければならなくなった。この点では使い勝手が悪くなったとの指摘もあるが、天気と自己の体調さえよけれれば、予め1日の行程とホテルさえ確保しておけば、さほど面倒でもない。秋の行楽シーズン、この切符を使わない手はない。
こうした旅の出発点である東京駅は大正3年12月20日、各方面別に分かれていたターミナル駅を高架線で結び、その中間点を「中央停車場」として開業された駅である。これにより日本初の鉄道基点駅であった新橋駅はその30年の役目を終えた。20th初頭、東京圏の鉄道網は ①新橋(汐留駅)を起点とした官営鉄道(日本国有鉄道)が運営する「東海道線」 ②隅田川を渡る鉄橋が建設困難であったため、両国駅を起点とした「総武鉄道」③秋葉原~池袋~新橋~品川を繋ぐ半環状線と田端と北千住を結ぶ線を運行していた「日本鉄道」④飯田町(飯田橋駅)から新宿、西東京方面を結んでいた「甲武鉄道」などが各々のターミナル駅をもち、相互乗り入れ、結び付きを持たなかった。こうした状況の打開を目的として東京駅は誕生した。駅舎設計は外国人設計師バルツァーから日本銀行や国会議事堂などを手掛けた辰野金吾と葛西萬司に託された。鉄道省などから見栄えのいい、壮観な建物をと要望されて完成した東京駅は、乗車口と出入口が200m以上も離れ、「国家の駅」「天皇の駅」としての位置づけが強く打ち出され、利便性を無視していた。更に繁華街であった日本橋方面への出口である八重洲口側には改札口が設けられなかった。加えて外堀も埋め立てられ、呉服橋、八重洲橋、鍜治橋なども不要として取り壊された。八重洲口の開業は昭和4年にずれ込み、敗戦後の昭和29年鉄道会館が建てられ大丸が開業した。長年東京駅八重洲口にあった駅ビル(大丸)は、八重洲通りを吹き抜けてきた東京湾からの汐風をここで遮断していた。近年、壮大なエコ計画がまとまり大丸は南北に分かれ、東京駅ホーム上は空間となった。この結果東京湾からの汐風は駅上空を通り抜け、江戸城跡、皇居のオゾンを拡散させ都心の気温を3℃ほど下げているという。
現在は国指定文化財である東京駅は、過去においては少なくとも駅舎としては、失敗作であるとの評価されていた。昭和20年5月25日、米軍による「山の手大空襲」により鉄骨造の屋根が焼け落ち、修復工事は3階部分が取り除かれ2階建に変更、南北のホール天井はパンテオンを模したデザインに替えられた。平成12年、丸の内駅舎を創建当時にの姿、即ち、明治時代の設計課家辰野金吾が設計したヨーロッパルネッサンス洋式を取り入れ、長さは322mとし左右に八角形のドームを置き、赤煉瓦壁3階建ての駅舎に復元する構想がまとめられ、平成19年に開始された工事費は500億円を要するとされた。考え抜いた挙句、その工事費用の捻出は、東京駅の持っている容積率を、丸の内側に立地する高層ビルに売却することで賄うことになった。これは「特別容積率適用区域制度」を使った空中権の売買である。平成24年に完成された東京駅丸の内駅舎は、丸の内南口側に立地する丸の内郵便局のテラスからその威容を見る事ができる。
JRでは東京駅を「中央駅」として位置づけており、前身である日本国有鉄道=国鉄時代から、列車の進行方向を示す「上り下り」の基点・原点となっている。また、東京駅は都区内及び東京山手線内各駅を発着する、長距離乗車券運賃を算出するためのキロ数基準駅ともなっている。鉄道の線路には一定の間隔ごとに設置された距離標(キロスポット)があり、これは路線の基点からの距離はkmで単位で表示、保安作業や運行管理にも欠かせないものである。その起点を示すものがゼロキロスポット(0哩標)である。地図でいえば「経度、緯度の基準点」、海の航路でいえば灯台のようなものである。江戸時代には「里程標」があった。そもそもは平安時代末期、奥州藤原氏が「白河の関」から陸奥湾までの道に建てたものが最初だと云われている。全国的に整備されるようになったのは、慶長9年 2代秀忠が設置したのが始まりで、日本橋を起点として全国の街道に1里毎に約10年かけて1里塚を設置した。そして、現代の東京駅はゼロキロスポットの宝庫である。東京駅の各ホームから見える位置に設置されているゼロキロスポットは、上り下りの勾配も解る「勾配標」もセットされている。1番線「中央本線」には4号車付近に設置されている。駅舎をイメージした赤煉瓦の上に、昔万世橋駅にあった「0」の石文字が乗っている。また、東京駅開業55年を記念して、4番線と5番線の山手線の間に設置されたゼロキロスポットは、ブロンズ製のオブジェでよく見ると「0」の中に「kⅯ」、台の部分には「起点」と刻まれている。6番線7番線の京浜東北線は、東北本線と東海道本の起点を示す珍しいもので、枕木に「0-0-0」と数字が記されている。更に、東北新幹線にはホーム中央上に亀甲型大理石の、東海道新幹線ホームには星型のオブジェが、ゼロキロスポットとして埋め込まれている。東京駅には各所にゼロキロスポットが満載されている。こうしたスポットを探しだして楽しむのも、旅の楽しみのひとつである。 「江戸純情派 チーム江戸」
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