旅の原点 日本橋vs東京駅ⅳ 東京駅物語

 大正4年に開業した東京駅は、当初丸の内側だけの改札口の駅舎であった。八重洲口が開設されたのは昭和4年、だいぶ遅れた開設であった。昭和20年、米軍のB29による東京大空襲で、辰野金吾が設計した丸の内側駅舎の屋根が焼失した。平成24年になって保存復元工事が完了、当時の東京駅の威容が復元され、同26年にはめでたく開業100年を迎えた。

 地上3階(中央線へは階段は91段ある)と、地下5階(横須賀線・総武快速)の駅舎、東京駅の令和6年度乗客数は、定期と定期外を合わせて1日平均434,564人、JR東海の新幹線乗客数は1日平均70,323人であった。また、1日の運転本数は4000本、ホーム数は東海道新幹線含め28本であり、1日の旅客収入金額(売上金)は約2億6千万円である。因みに新宿駅の乗客数は小田急線、京王線など私鉄各社の乗り換え、直通運転乗車客を含めて1日平均約300万を超えるという。世界最多の駅利用客数として、ギネス世界記録にも認定されているが、明治18年、甲武鉄道の一つの駅として開業した時点では、1日平均50人程度の小さな駅であった。このように利用客数では世界一を誇っている新宿駅であるが、売上金額では東京駅より約1億円少ない、1日約1億6千万円と2位にとどまっている。これは東京駅は新幹線などの長距離列車の運行が多いため、客1人あたりの乗車券の単価が高いためである。

 沢山のお客様が待ち合わせする場所として、東京駅構内の「銀の鈴」が使われている。初代は昭和43年、当時の駅助役の発案で設置された。新幹線南口側乗り換え改札口天井に、竹の骨組みで鈴を作り銀紙で包み、内部にスピーカーを付け鈴の音を鳴らした労作を設置した。2代目は銅の鋳物製で昭和43年八重洲中央口に設置された。現在のシルバー世代がお世話になった鈴である。3代目は昭和60年、現在ある地下コンコースへ移動、4代目は場所は同じながら材質はアルミ合金製に軽量化し更新されている。この他にも東京駅構内には歴史を刻むメモリアルな遺跡が沢山存在している。江戸時代、八重洲側に掘削された外堀に掛かっていた「八重洲橋」の礎石2ッが、丸の内駅舎の中央正面に飾られてている。また、その丸の内駅舎は国指定重要文化財であるが、約100前前の開業時の赤煉瓦オリジナルが丸の内南口の線路側に飾られている。八重洲南口から京葉線まで距離にして約400m、ここには動く歩道が3列、3段、合計9基が設置され、楽だが10分程掛かる。自分の足で歩くと約5分の道のりである。この京葉線連絡通路には「天地創造」をモチーフにした巨大なステンドグラスが飾られ、更にこの線の地下八重洲口の外にはRTO(進駐軍鉄道司令部待合室)の壁を飾ったレリーフも飾られている。面白いことに東京駅京葉線は、構内の山手線ホームより有楽町駅の方が近い。有楽町駅で乗り換えを申し出ると、案内標を渡され精算なしで外を歩いて京葉線に乗り継げる。他に史跡として、東京駅の近くには八重洲北口地上に「北町奉行所跡」がある。因みに南町は有楽町マリオン近く、江戸の治安を担った与力同心たちは、八丁堀の役宅からそれぞれ歩いて約15分の職場に通った。また、八重洲通りと中央通り交差点の緑地内には、江戸初期三浦按針と共に、家康に航海術や砲術を伝授したヤンヨースデンの像が置かれている。現在の八重洲という地名は彼の屋敷地がここにあったことに由来する。

 こうして東京駅は華やかな面がある一方で、様々な問題も抱えている。東京駅は元々海に近いこともあって、地下水位が高く、地下水によるホームの浮上、変形問題にさらされている。いわば浴槽に浮いた張子の虎のようなものである。特に総武快速、横須賀線地下ホームは丸の内側のロータリーの真下にあり、上に重しとなる建物が無いため、浮上の影響が大きいホームとなっていた。問題の総武快速線、横須賀線は地下5階部分、地下水位は地下3階部分である。防止策としてホーム階に鉄製の重りを置いたり、アンカーを打ち込む工事をしてきた。平成14年になって品川区立会川まで全長12㌔の導水管を設置、東京駅の湧水地下水を立会川に流す事で水位浮上を抑えようとした。通常地下水であれ下水管に水を放出すれば「下水道使用料金」の対象となる。この下水道料金を抑えたいR東日本と、立会川の水質浄化を目指す東京都は、双方の思惑を擦り合わせた。立会川に地下水を放出することで、水量が増加し悪臭発生防止効果を望んだ東京都が、このプロジェクトに賛同した。結果、JR側は下水道の抑制に繋がった。近年珍しく両社のメリットが合致したプロジェクトXであった。

 近年の東京駅はビジョンが膨らむ。①現在つくばみらい市から秋葉原までの「つくばエクスプレス」を東京駅まで延伸。➁京成押上と京浜急行泉岳寺を東京駅経由で繋ぎ、成田空港から30分台、羽田空港から20分のアクセスを可能にする。③京葉線の中央線方面への延伸。④東京モノレールを東京駅へ延伸などである。これらが実現すると益々利便性が増すが、東京一極集中が加速すると危惧されている。<了>  

 次回<江戸瓦版>は、シリーズ「姫たちの落城・毛利家の人々」と題し、戦国時代、関ヶ原の戦い、明治維新での長州藩の人々の活躍、失敗を追います。「江戸純情派 チーム江戸」しのつか でした。

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