18きっぷでゆく/でっかいどう北海道➁富良野・礼文・知床

 旭川をベースキャンプにした旅行には、大自然に囲まれたものが多い。旭岳トレッキングコースは、JR旭川駅からバスで1時間余乗ると、2000m級の山々が連なる大雪山系の盟主旭岳の麓、原水が湧き出るバス停に着く。そこから旭岳を映す、姿見の池の側にあるロープウエイで山腹に向かう。ゴンドラからの眺めは無論、勿論素晴らしい。降りれば7~8月頃に白い小さな花をつける高山植物のチングルマの群生落や、エゾコザクラが迎えてくれる。碧く澄みきった空に険しい稜線、それを映す姿見の池をぐるりと廻る天空散歩である。快適に疲れた体を癒すには、露天風呂を備えた日帰り温泉もあり、食事も楽しめる。

 ケンとメリーの木やマイルドセブンの丘などでお馴染みのパッチワークの美瑛は、旭川から「富良野線」に乗って、JR美瑛へ向かう。駅前のレンタサイクルを借りて、アップダウンの激しい丘を自分の足をたよりにこぎまくる。その前に四季の情報館で地域のマップをゲットしておくのも重要である。角を曲がり損ねると思わぬ処に持っていかれる。境界や目印の為に道端や丘に植えられたポプラの木は、近くへ行ってみると想像以上にデカイ、デカイ北海道の大地にシッカと根をおろしている。「根室本線」から分岐している「富良野線」一帯がラベンダー畑が拡がる。昭和51年に旧国鉄のカレンダーに載せられ、そこから火がついた。紫、赤、白、黄色などパッチワークの花畑で構成されている、ファームでみられるラベンダーには、おかむらさき、はなもいわ、ようてい、などがあり、ポプリやオイルとなって販売されている。定番は香りと紫の色合いがいいラベンダーソフト(¥250)である。あちこちのファームを効率的に廻るには、「富良野線」は本数も少ないため、レンタカーなどで、効率的に廻るのがお勧めだが、今回は地元の友達の車に便乗させて貰い、ファームの他、国民的ドラマになった青大将田中邦衛主演の「北の国から」のロケ地なども案内して頂き、こちらでも至福の時間をもたせて頂いた。また、旭川市内には、「氷点」の三浦綾子記念文学館や、日本一人気の高い動物園といわれる旭川動物園がある。また、ビール好きには、大雪地ビール館もある。

 JR旭川を6:03発の「宗谷本線」に飛び乗ると名寄7:45、音威子府9:05、幌延10:31、終点稚内には12:07に着く。普通列車の直通はこの1本だけである。次の8:08の電車は名寄止り、この始発を逃すと、この日の行程は全てアウトになる。「宗谷」「サロベツ」など、特急3本に乗れば別の次元の話になる。勿論、千歳から飛行機も就航、約1時間ほどで空港へ着く。双方とも18きっぷの精神から大きく外れる。旭川からの営業㌔は259,4㌔、所要時間6時間04分、かっては「天水線」「羽幌線」などが分岐していたが、それらが廃線となり、現在では日本最長の「盲腸線」となっている。終点稚内に着く4~5分前になると進行方向左側に海岸線が見えてくる。ほんの30秒ほどであるが、明日訪ねる「利尻島、礼文島」を見ることができるから嬉しい。港の場所を確認してから、本土最北端の「宗谷岬」に向かう。駅前バス停から63分、左手は「宗谷海峡」の碧い海原が拡がっている。まさに岬めぐりのバスは走る~ぅ、の旅である。宗谷はアイヌ語で「ソー・ヤ」磯岩の崖を意味する。北緯45°31′22″、東京は35°、最南端沖ノ鳥島は20°、我が国日本は縦に長い。同じ緯度にはミラノ、リヨンなどの都市がある。岬に立つと北極星の一稜をデザインした記念の碑が建てられている。側にもう一人佇むのは、日本人でただ一人世界地図にその名が刻まれている間宮林蔵であるじっと「オホーツクの海「を見ている。

 「宗谷岬」と「樺太(サハリン)」の南端西登呂岬との間は43㌔、天気の良い日は島影が見える。文化6年(1869)発見、シーボルトが命名した間宮海峡(タタール海峡)は、樺太の西側とアジア(ロシア)大陸の間の海峡であり、東はオホーツク海峡となっている。樺太はもともとアイヌやオロッコなどネイティブな民族が住んでいた島であった。そこへ日本やロシアからの人間が移住していった。明治8年(18759)5月、ロシアと千島・樺太交換条約調印、明治38年(1905)9月、日露講和条約がポーツマスで調印され、北緯50°以南の樺太が割譲された。この講和に反対する国民が日比谷公園で暴動を起こす事件が発生している。昭和20年(1945)8月8日、旧ソ連は対日戦線を布告、ポツダム宣言受諾以降も戦闘が続き、多くの戦争孤児が生れ、真岡では誤報から、女性電話交換手9人が服毒自殺、引きあげ船3隻が北海道沖で潜水艦から攻撃を受け沈没、1700人余が亡くなる三船遭難事件など、痛ましい事件が続いた。昭和26年(1951)サンフランシスコ平和条約締結、日本は樺太の一部と、千島列島の権利を放棄、現在、日本の実効支配が及ぶのは、岬の沖合西北約1㌔に位置する無人の弁天島である。厳しい歴史の現実の勉強の後は、地元産のつぶ貝や海老、ホタテなどがふんだんに入った、その名も最北端ラーメン(当時¥1350)北の海凬にさらされた体に、北の海の幸のダシ汁がしみ込む。

 稚内港7:30出航の東日本海フェリーに乗船すると、利尻島の鷺泊港を経由して、礼文島の香深港に10:10に入港する。「花の浮島」礼文島は「利尻、礼文、サロベツ国立公園」の一部、アイヌ語で「沖の島」、冬は-19,4°cにもなる、稚内西方60㌔に浮かぶ北の海の離島である。新生代の初期に大陸の一部が離島になった為、島では北方の植物が多撞自生、その数は300種類にも及ぶ。トドマツ、ハイマツに加え、本州では2000m級の山々でしかみられない、レブンソウ、ミズバショウやエゾカンゾウが自生している。なかでも5月終り頃からひと月ほど咲く、「レブンアツモリソウ」は現在では、この島だけに自生するレアな高山植物で、スズランを大きくしたような、直径5~7cm程の淡いクリーム色の花を咲かせる。この名の由来は、花の形が一の谷で戦った平家の若武者平敦盛の騎馬姿、母衣からイメージしてつけられたという。須磨公園の敦盛桜と同様、北の島でも敦盛殿健在である。この島でのハイキングコースは南島部を一周する「桃岩展望台コース」約2時間、木道や柵も整備され、安心して景色や花たちを見ることもできるが、凬通しも極めて優れ、天然のクーラーである。 桃岩展望台からは、約8㌔離れた利尻島の中央にそびえる「利尻富士(1721m)」を望める事が出来る。麓は原生林や沼に続き、6月頃にはエゾカンゾウの群生落となる。この離島のグルメはやっぱ海の幸、アワビ、ホッケ、ソイ、それに何といっても極めつけは、利尻昆布を食べて育ったウニだろう。対馬海流とリマン海流のもと、ウニ丼発祥の地として知られる礼文島で、まったりと濃厚な本場のウニを食べるのも、旅の醍醐味である。

 JR稚内5:20の「宗谷本線」上りに乗ると11:24に旭川に着く。ここで地元旭川ラーメンをかっこみ「石北本線」に乗り換える。この線も「宗谷本線」と同じく18きっぷ愛好者には冷たい路線、先ず直通が無い。13:59発の普通に乗っても、15:37の快速きたみに乗っても、当麻、遠軽と走り、カーリングの「そだね」でフアンを沸かせた北見で乗り換え、網走20:24、知床斜里には21:15となる。知床半島への足はこの知床斜里のバスターミナルが基本となる。知床半島はアイヌ語で「シリ・エトク」陸地の突端部、岬を意味している。   知床は10th前後にアイヌ民族が取猟や魚労をしながら、豊かな文化を育んできた地域であり、倭人は大正3年、岩尾別に最初の開拓者が入植しているが、一旦退去、昭和24年、再入植している。「知床岬」はアイヌ語で示される様に、オホーツク海の南端に突きだした半島の突端部にある岬であり、北半球における流氷の南限地域である。この流氷により豊富な植物性プランクトンが発生、この増殖を基礎とした、多種多様な生物が生息、生育する地域となっている。鮭、鱒を餌とするヒグマ、オオジロワシなど、海と陸と空との自然環境が混じり合って、豊かな生態系を形成。また、知床連山や五湖、海岸線など勝れた自然美を有している。これらを踏まえ、2005年「世界自然遺産」に登録された。

 知床斜里バス停からウトロ温泉ターミナルまで約1時間、ここからハマナスの咲く知床岬へ向かう観光船が出ている。この船は1日1便、80~200mを超す「海食崖」と呼ばれる断崖が連続、そこから知床五湖からの水が滝となって幾つも流れ出し、岩礁にはアザラシが日なたぼっこをしている。ウトロからマイカーが規制され、夏期のみシャトルバスで行くのが「カムイワッカ湯の滝」昭和11年、硫黄山が爆発、温泉と川の水が、一緒になって滝つぼに落下、露天風呂となっている。しかし、そこまで行くのが一苦労、特に足場が悪い為、祭りで使用する地下足袋などを用意していくと便利である。苦労の甲斐で浸かれば、豪快でワイルドな露天風呂となる。ウトロから少し路線バスに乗ると、知床自然センターに着く。ここから歩けるのが回遊式木道を備えた「知床五湖」である。知床連山の麓、原生林に囲まれ、羅臼岳の山容を映す湖は、湖底から水が湧き出し、半島の断崖へ流れ出ている。360度、自然満開の五湖であるが、日によって森の住民、ヒグマやエゾシカが出没するから要注意である。 夏だけの観光に思われる知床であるが、冬はオホーツクから南下してくる流氷を眺めるツアーもある。砕氷船オーロラ号で白い海原へ乗り出す。まるででかいカキ氷の上を行くよなものである。因みに流氷を砕くには、船体の自重で砕く方法と、船首の大型ドリルで砕く方法がある。また、網走番外地といわれた元「網走監獄」もある。明治23年、道内の幹線道路の建設の労働力として集められた、囚人たちの生活を知る事が出来る博物館・網走監獄内では、ランチ時間になると麦飯に味噌汁、焼き魚など、おかず三品がついた監獄食を¥500で食べられる事が出来る。ウニ、イクラなどや、生ビールかぶ飲みで、体内コレステロールが気になり始めた旅人には、是非リーズナブルでヘルシーなメニューが、お薦めである。

次回、其の参は釧路湿原・納沙布岬・襟裳岬と、またまた大自然満喫の旅を巡ります。

                    江戸純情派、チーム江戸 でした。 

 

 

 

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